月下の誓約
「頭を低くしてと申し上げたでしょう?」
「だって、お尻が浮いちゃって振り落とされるかと思ったんだもん」
「のけぞった方が振り落とされますよ」
大きくため息をつきながら目の前にある紗也の背中を見て、和成は益々ため息をもらした。
のけぞった拍子に背中にべっとり血が付いてしまったのだ。
「ねぇ、和成が手で支えてくれない?」
「はい?」
紗也の唐突な申し出に、和成の声は思わず裏返った。
答えずにいると紗也が不安そうに尋ねる。
「片手じゃ馬に乗れないの?」
なんだか小馬鹿にされたような気がして、和成はムッとしながら、ついつい対抗した。