月下の誓約
和成は馬を引いたまま、紗也と共に司令所に向かった。
一刻も早く紗也の無事を皆に知らせたかったからだ。
二人が司令所に顔を出すと、兵士たちが皆安堵の笑顔を浮かべて出迎えてくれた。
口々に紗也の無事を喜び、怪我はないかと気遣ってくれる。
皆に心配をかけた事は紗也にもわかっていた。
和成の後ろに隠れるようにして様子を窺っていたが、案外暖かく迎えられた事にホッとして、紗也は気まずそうに笑いながら小さく会釈した。
そしてここでも、血まみれの和成の姿に皆が騒然となる。
負傷したのかと大騒ぎする兵士たちに和成は笑って答えた。
「いや、どこも怪我してないから。全部返り血です。それより戦況を」
隊長がそれに答える。
「ただいまの状況ですが、敵全軍撤退しましたので前線部隊は念のため明日まで待機しているところです」
「そうですか。経過を手短にお願いします」