月下の誓約
「あ? 俺か? まぁ、全面的に納得したわけじゃないが、一理あると思ってな」
塔矢がそう言うと、紗也は勝ち誇ったように胸を反らした。
「ほぉら、ごらんなさいよ。反対してるのは和成だけよ」
大臣たちはともかく、実際に戦場に赴く部隊長たちは皆、不安に思っているのではないだろうか。
表だって反対していないだけで、決して自分だけではないと和成は確信している。
実の娘同様に紗也を可愛がっている、塔矢にしても同じではないだろうか。
紗也の軽い調子が益々、和成の憤りと不安に拍車をかけた。
だがこれ以上紗也と言い争っていても平行線を辿りそうなので、和成は一旦退く事にした。
「わかりました。塔矢殿がそう言うなら、私も従います」
「ちょっと! どうして塔矢の言う事なら従うのよ!」