月下の誓約


「はい。守りに転じて後退する秋月隊を、交戦中だった山西数馬が追撃してきました」


 和成が苦笑する。


「やはり、山西数馬は追ってきましたか。優勢だった敵が突然後退したら誘い込まれてるとか思わないんですかね? 私なら追いませんよ」

「ええ。実際には誘い込んだ訳ではないんですが、これが功を奏しまして攻めに転じた時、側面から援護に当たっていた茂典隊と塔矢隊で挟撃し、塔矢殿が山西数馬に一騎打ちを申し出ました」

「一騎打ちとは無茶をなさる。で、討ち取ったんですか?」

「残念ながら。しかし、深手を負わせました。
これにより敵の士気が一気に下がりまして全軍撤退となりました」

「わかりました。皆も交代で休んで下さい」


 和成の声を合図に兵士たちの一部が宿舎に引き上げていく。
 それを横目に見ながら、和成はため息をついた。

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