月下の誓約
馬を戻し、宿舎に向かっていると、向こうから怒気を孕んだ声が呼び止めた。
「和成!」
声の主は塔矢だ。
和成は側にいた紗也をその場にとどまらせ、自分は三歩前へ出て歯を食いしばる。
塔矢は大股で歩み寄ると、目を閉じた和成の頬を平手で思い切り打った。
打たれた頬がみるみる赤く腫れ上がる。
項垂れた和成の胸倉を掴んで引き寄せると、塔矢は至近距離で怒鳴りつけた。
「おまえの仕事は何だ?!」
消え入りそうな声で和成は答える。
「紗也様の護衛です」
「このような失態、断じて許されるものではないぞ!
わかっているのか?! おまえは国を潰しかけたんだぞ!」