月下の誓約
9.月下の儀式
しばらくして泣きやんだ紗也を宿舎の部屋に案内し、和成は司令所に戻った。
深夜の司令所は光熱費節減のため、不要な灯りや電算機の端末は消されている。
薄暗い室内には数名の兵士が待機していた。
和成は自分が当直を申し出て、彼らを全員休ませた。
他に誰もいなくなった部屋で、ひとつだけ電源が入っている端末の前に座る。
その画面を見るともなしに眺めながら、長かった今日の出来事を反芻した。
記憶を辿っていくと、最後に紗也の泣き顔が思い浮かぶ。
胸の痛みまで蘇った。
和成が紗也の泣き顔を見たのは初めてだった。
紗也は毎日和成に怒鳴られてもケロリとしている。
少しは反省すればいいのにと、いつも苛ついていたが、泣かれるのは辛いと気付いた。
どれほど時が経ったのか、扉の開く音がして和成は視線を上げる。
入り口から若い兵士が和成に歩み寄ってきた。
「和成殿。私が替わりますのでお休みになって下さい」