君に聞かせる物語
そんな君が外の世界に関心を寄せるまでに、そう時間はかからなかった。

そもそも好奇心を人型にしたような君を、こんな狭い集落なんかに閉じ込めて置くなんて土台無理な話だ。

周りの反対や両親の泣き脅しなんかに君が屈するはずもなく、君は一人着実に外に出る準備を進めた。

一度こうと決めてしまったら、君は絶対に意思を曲げない。

君の中に有るのは「知りたい」と言う欲望。

シンプルなまでにそれだけで。

だからその「知りたい」はかなり純度が高くて。

君は貪欲なまでに飢えていたんだと思う。

僕の事さえ置いてけぼりにするくらいに。

君の隣にいたいなんて。

そんな僕の身勝手な気持ちじゃ君を引き留められないことはわかっていた。

だからせめて、君の旅立ちが1日でも遅くなるように祈っていたんだ。

我ながら女々しいと思う。

でもあの頃の僕はかなり本気だった。

そんな僕に君は呆れたように笑って、

「ついてきてくれるでしょ?」

と当然のように言いはなった。

そして、僕は君と一緒に閉鎖的空間から抜け出したんだ。

不思議なことに、そうすることが自然だと思えたから。
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