君に聞かせる物語
そんな毎日が崩れたのは、本当に突然だった。

なんの前触れもなく、防ぎようもなかった。

君が朝目を覚まさないなんて、その前の夜僕の中にそんな考えは欠片ほどもなかったんだ。

君はいつもと変わらず楽しそうに話ていたし。

僕らはおやすみなさいを言い合って一緒に眠りに落ちるその瞬間まで、手をつないでいた。

明日も君と挨拶を交わす朝を、僕は疑わなかった。

何度思い返しても僕がそうなのだから、君は僕以上に驚いているかもしれないね。

それとも、これもいい経験と喜んで研究データにしてしまうだろうか?

そのほうが、君らしい気がする。

話を戻そうか。

あの日何度起こしても起きない君は、ただただ規則正しく呼吸を繰り返していた。

僕の頭には、一つの可能性が浮かんだ。

そしてそれがけして低くない可能性であることも僕はわかっていた。

急いで病院に君を運び、直ちに検査した。

結果は思ったとおりだったよ。

君は、新型のウィルスに感染していた。

ただただ眠り続けると言うウィルスに。

どうして、君は感染してしまったんだろう?

僕の問に君は答えない。

僕は絶望的な気持ちになった。

だってこの病気は、特効薬がない。

君がずっと研究して、いつか治すんだと意気込んでいたものだから。


< 7 / 8 >

この作品をシェア

pagetop