True Love


「ありがとう」

テーブルの下から出てきた佐野くんが、私にお礼を言う。

整った綺麗な笑顔に、ドキッと胸が弾んだ。

それに…さっき佐野くんの指が私の足に触れた感覚がまだ残ってて…恥ずかしくなる。

ほんの少し指で触れられただけなのに…。


「見つかると面倒だから。今はあんまり話す気分じゃないんだ」

軽く流すように、佐野くんは言った。

…そんなふうに思うときもあるんだ。
佐野くんに言い寄る女の子はきっと後を絶たない。

扱い慣れている。
そう感じた…。


「高野さんは真面目なんだね。ちゃんと掃除に来て」

真面目…?
当番だから掃除に来るのは当たり前。私にとっては普通のことだ。

真面目だね…なんだかその言葉がイヤでたまらない。

多分それは、佐野くんに言われたから。

距離があるような、突き放されたような気分になる。
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