True Love


「テキトウに掃除しよっか」

「うん…」

まだ、クラクラしてる。
ボーッとしてる。

箒で掃き始めるも、なんだか手に力が入らない。

チラリと佐野くんに視線を向けると、箒を手に持った佐野くんとばっちり目が合った。


「何?」

「えっ…なんでもない」

「嘘」

「…嘘じゃないよ」

「じゃあなんでこっち見たの?」

「それは…なんとなく」

どうしよう…また、顔が熱くなってきた。


「高野さん、また顔赤いよ?」

「…っ」

「なんで赤いの?」

なんでって、そんなこと聞かれても…。
答えられず黙りこんでしまう。


「ごめん。からかいすぎた」

そう言って、笑顔を浮かべる佐野くん。


「可愛い」

次の瞬間、フワリと良い香りが鼻をくすぐる。爽やかで涼しげな…ほのかに甘い香り。佐野くんのつけてる香水の匂い。

私は…佐野くんの腕の中にいた。


「っ!…あっ、あの!何を!」

「可愛いから抱き締めちゃった」

さらりとそんなことを言うから、私の顔はますます赤くなる。

可愛いなんて…初めて言われた。


「…は、離して」

「やだ」

ギュッと佐野くんの腕の力が強まるのを感じた。
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