True Love
ふと佐野くんを見ると、佐野くんは一冊の本を手に取って眺めていた。

何を読んでいるのだろう…?


さりげなく少し佐野くんのほうへ近付いて、本を見ようとする。

だけどまだ距離があって、よく見えない。

普通に聞けばいいのだけど…自分から話しかけるのは、やっぱりできなくて。


すると、佐野くんと目が合った。

なんとなく気まずくて、咄嗟に目をそらす。


「一緒に見る?」

私の心を読んだかのように、佐野くんが声をかけてくれた。

私はこくりと頷いて、佐野くんの隣に並んだ。


佐野くんが見ていたのは、お菓子の本。


「お菓子…?」

なんだか意外で、まぬけな声が口から出る。


「意外?」

笑顔で顔を覗きこまれ、ドキッと心臓が跳ねる。


「…うん。ちょっと意外」

「そっか」

佐野くんと甘いものって、あまり結び付かない。
< 47 / 119 >

この作品をシェア

pagetop