True Love
ついにお互いの吐息がかかるほどの距離まで近付いた。

もう…ダメっ!
私はぎゅっと目を瞑った。


すると、

「あれー?未来は?」

「佐野もいねーじゃん!」

扉の向こう側から、千晶ちゃんと笹本くんの声が聞こえてきた。


その声に、ぱっと目を開ける。
すると、佐野くんの動きもピタリと止まり、近かった距離が遠くなる。


ほっと胸を撫で下ろす。

だけど…ドキドキはおさまってくれそうにない。


「残念」

笑顔でそう言うと、佐野くんは壁から手を離した。

どう反応したらいいのかわからず、頬を真っ赤に染めたまま、私はただ黙っていることしかできなかった。


「戻ろっか」

「うん…」

ほとんど声にならない声で、返事をする。

食器を手に持つと、私と佐野くんは歩き出した。


意識が、ぼんやりしてる…。

佐野くんに、キスされそうになった…。

もしも…千晶ちゃんと笹本くんの声が聞こえなかったら…キス、されてただろうか?


佐野くんと、キス…。

考えただけで、のぼせそうになる。
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