True Love
「ねえ、ちょっとつけてみない?」

「えっ?」

千晶ちゃん、何言って…。


「尾行だよ、尾行!あっ…ヤバイ歩き出した。ほら、早くっ!」

「ちょっと、千晶ちゃん…!」

ぐいっと手を引っ張られ…躓きそうになる。


考える間もなく、佐野くんを尾行することになってしまった。

人混みの中、佐野くんと女の子の少し後ろを気付かれないように歩く。

楽しそうに笑い合う二人…繋がれた手が目に入り、悲しくなる。

手とか、簡単に繋いじゃうんだ…。

そうだよね…。
これくらいのこと佐野くんなら当たり前だよね…。

きっと全然普通のこと。
前から知ってたけど、やっぱりどうしても…落ち込んじゃう。


「…何話してるんだろ?んー、この距離じゃ会話まで聞こえない」

聞こえなくていい、かも…。
きっとますます落ち込むだけだから…。


すると、二人が角を曲がり見えなくなった。


「あっ!ヤバイ!」

千晶ちゃんはそう言うと歩く足を早めた。

だけど人の波に邪魔され思うように進めない。


やっと角を曲がった時には二人の姿はなかった。
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