【完】うしろの席のオオカミさん


足を止めて二人に体ごと向ける。


顔は見たことあるけど名前は知らないなぁ。
わたしに何か用かな?




「郁磨の彼女なの?」




へっ?という間抜けな声が出そうになるのを頑張って飲み込む。


誰が大上くんの彼女だって?




「最近、遊んでくれないんだよね。及川さん郁磨のこと独り占めしすぎじゃない?」




独り占め……って。
わたしそんなつもり全くないのですが。




「あ、及川さんって真面目だから勘違いしちゃってそうだよね。好きとか普通に誰にでも言うよ郁磨って」



甲高い笑い声がすごく響いている。

耳障りな声にイライラしてくる。
わたしってこんな短気だっけ?



「……そんなの分かってるよ。言われなくても分かってる」



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