【完】うしろの席のオオカミさん



「あ、水瀬(みなせ)くんだ」



愛華ちゃんのその声にわたしたちはそろって教室のドアの方に顔を向ける。



うちの高校は男子は学ランで女子はセーラー。


10月に衣替えがあるので今はまだ夏服。


シャツの裾をちゃんと中に入れてて制服をきっちりと着こなしている男子が教室の中へと入ってきた。



真面目な好青年。
先生たちからの評判はとてもいい。


性格も穏やかで友達も多い。



三年間同じクラスだった水瀬くん。
わたしはたぶん彼のことが……




「日向子チャン、サボらないでねー」


「お、大上くん……」



水瀬くんのことを目で追いかけていたのにいきなり目の前に現れた大上くんのせいで姿が全く見えない。



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