【完】うしろの席のオオカミさん
両手からバッグを下げて廊下を歩いていると、見覚えのある仲居さんが向こうから歩いてくるのが見えた。
あ……あの仲居さん…!
「あ、あの!おはようございます」
勇気を出して声をかけてみた。
二十代前半ぐらいかな。
とても美人さんだ。
「おはようございます。どうかなさいましたか?」
「いえ、あの……特に用はないのですが…ちょっとお話ししてみたくって」
朝ってきっと忙しいよね。
なのに、わたしってば引きとめちゃった。
「す、すみません。忙しいのに…」