【完】うしろの席のオオカミさん
哀れむような目でわたしのことを見ないでほしいわ。
わかってるよ。
手の届かない人を好きになるなんて可哀想な子だね、とか言いたいんでしょ?
見てるだけで十分。
それだけで楽しいんだから別にいいじゃない。
片想いの形なんて自由でしょ?
「あいつ、彼女いるよ」
静かすぎるこの空間。
少し動けば服が擦れる音さえ聞こえてしまう。
「彼女ぐらいいて普通だよね……」
彼女いたんだ。
知らなかったなぁ。
というか、わたし水瀬くんのことなにも知らない。
メアドも誕生日も好きなものも
なにも知らないな。
学校にいる教室にいる水瀬くんしか知らない。