【完】うしろの席のオオカミさん
「…………」
できるだけ音を立てないように静かに椅子をひく。
後ろの席の住人。
知っているんだけど知らない人。
「郁磨ぁ~!起きてよー」
「……うるせ。もうちょっと寝かせろ」
背後で聞こえてくるやり取りが耳に入ってくる。
眠たそうな声。
チャイムが鳴る数秒前。
先生が教室へと入ってきた。
あぁ、今日もまた一日が始まる。
穏やかな一日でありますように。
なにも起こりませんように……
「なぁ、三つ編みってどーやんの?」
髪をグイグイと軽くひっばられる感じがして半分後ろに顔を向けた。