神様が泣いたあと
教室の扉を開けるといつも通りにガヤガヤと騒がしく、宿題を写すヤツや大声で笑うヤツもいればボールまでも飛び交っている。
しかし哲の机に哲の姿がない。
「あれ?哲まだ帰ってきてねーの?」
近くにいたクラスメイトはさっきまで大爆笑していたせいか半笑いで目に涙をためながら答えた。
「あぁ哲なら倒れて保健室に運ばれたらしいぜ」
全身血の気がひいた。
一瞬、息ができなくなった。
後ろにいた原田さんも俺と同じように驚愕の表情を浮かべている。
教室の騒ぎ声が何も耳に入らなくて世界から音が消えた。
そんな俺を原田さんが心配そうに見ているのがわかったけれど今は『平気だよ』と声をかける術さえ分からない。
俺は言葉を失って確認する余裕もなく足が勝手に全力で走り出していた。
勢いよく開けたドアが大きな音を立てて教室中に響きわたった。
「あ?!おい翼!!」
「翼くん!」
俺を呼ぶ声が遠くの方で聞こえてきたが、それを振り切るように走った。
もの凄いスピードで景色が流れていく。