ブルーリップ
孤高のプリンセス
日差しの強い日だ。
ワイシャツの第二ボタンを開けながら、空を見上げた。
快晴だ。
冷房の効いた部屋の窓から見れば、文句なしの良い天気なんだろう。
自転車をコンビニの傍に置いて、変な音がする自動ドアをくぐる。
涼しい空気が全身を巡るこの瞬間は好き。
今日の店員さんは、新しい人だ。
あの玉ねぎ型のキツネ目は、見たことのない顔だ。
私は1リットルの水を買って、一気に飲む。
これは私の、スタイル維持のための大事な日課だ。
水は体の中の老廃物を押し流してくれるらしい。
そして、私は9時頃学校に着く。
朝のホームルームが終わって、調度授業が始まる時間帯。
先生は遅刻だ、と渋い顔をするし、
生徒の中にはタレントこれだから、と嫌みを言う人もいる。
だけど絶対、こっちの方が合理的だとおもう。
ホームルームは時間の無駄。
私から言わせてみれば、勉強しかやることがない奴らこれだから嫌いだ。
私が通っているのは、都内の進学校。
大学も付いている私立で、そこそこ人気があるし、偏差値は異常に高い。
私がこの高校にいるのは、私が"立川若葉"だからだ。
私、立川若葉(たちかわ わかば)は、世間ではテレビタレントとして有名。
実際はデザイナーだということもよく知らず、この高校の理事長は、宣伝のために私を入学させた。
そういう理由で、私は大学の心配をせずに、仕事に専念できる。
二度目だが、私はデザイナーだ。