ジャスミン【短編・完】
素直
「こと!」
「あ〜…また来たの?何もないのに。」
コンビニから出てくる彼女に走り寄る。
彼女のバイトが終わるのは、日付が変わる頃だけどそんなことは気にしない。
寝不足なのは俺も彼女も一緒なわけだし。
「寝るとこないから、泊めて?」
「…見えすいた嘘はやめなさい。」
呆れたように微笑んで、ことは薄いため息を吐いた。
「ダメって言っても来るんでしょう?」
「当たり前。」
「なんであたしに付きまとうかな〜?」
本当に不思議そうに呟いて、歩き出した。
俺はその横に素早く並ぶ。
「今日はお客さん多かった?」
「まあまあかな。平日にしては少なかったかも。」
「よかったじゃん。」
「暇なほうが辛いときもあんのよ?」
「へ〜」
「…キミはバイトしないの?」
「ことのお迎えで忙しいから。」
「しなくていいって。あたしそんなこと頼んでないし。」
「俺がしたくてやってんの。」
「…毎日、学校あるんでしょ?」
「あるよ。」
「今しかできないよ、青春は。」
「青春してるから全然大丈夫。」
ことの疲れた顔も、呆れた声ですらも、俺の青春だと思う。