【続】隣の家の四兄弟

聖二side



カララ……と、窓が閉まる音を聞いて、煙草を消した。


『お前…………』


そこまで口にして、続きを言うのを止めた。

だって、なんて言えばいいんだよ。


『チハルとなに話してたんだ?』とか、『チハル(あいつ)、なんか言ってたか?』とか。
どれも俺には口に出来ないようなことばかり。

チハルが隣に同居するって聞いたときは、大して気にも留めなかった。

現在(いま)のチハルの第一印象と、美佳と。
総合して考えたら、なにか起きるなんてこともないか、と思ったし。

あんなガキ、世間で人気があるらしいチハルなんて、これっぽっちも興味ないだろうし。


そんな甘い考えでいた――今日(さっき)まで。


胸がざわつき始めたのは、アキラと再会してからだ。

明らかに、美佳は淋しい思いをしてるとは気付いた。

それに、「嫉妬」。ちらっとさっき聞こえたフレーズだったから、間違いない。
だけど、正直、嫉妬されるのも悪くない気分でいたのも事実。アイツの“嫉妬”は、醜く感じなかったし、ちょっと膨れるような顔を見るのも楽しかったけど。

……っつったら、俺、相当、悪趣味だよな。

でも、そんな自分も初めてで。

駆け引きとか、表と裏の顔とか。そういうのを駆使して女と付き合うとかが、面倒で、疲れて……イヤんなったひとつの理由だと、分析した。

だから、目の前で、わかりやすいくらいに、落ち込んだり、妬いてたり。
そういうアイツが、やっぱりよくて。

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