【続】隣の家の四兄弟
「え? なんかあったの?」
メールを見ようとしたわけじゃないけど、無意識にその携帯を覗きこむような態勢でそう聞くと、三那斗がメールボックスを見せるようにして答える。
「や、浩兄から、『着いたら連絡する』って言われてたのに。なんにもねぇから」
「え……まさか、なんかあったんじゃ……」
思わず口にした“心配”だった。
けど、それを口にしたことをすぐに後悔した。
三那斗の顔を見たら、すぐにわかる。
私のその言葉に、両親を失ったことのある三那斗が、どれだけの不安と緊張と、心配が重なったかを――。
「あ! でも、待って。もしかして、仕事! 急な仕事、入ったのかも! ね?」
「あ、ああ。……でも」
「それか、連絡することすっかり忘れてるのかも!」
私は務めて明るく振る舞いながら、フェンスから校門を見下ろしてみる。
パラパラと数えきれるくらいの少人数の中に、浩一さんらしき人は見当たらない。
私の後を追うように、三那斗も横に並んで玄関を見下ろす。
だんだんと私の中の不安も大きくなり、忙しなく思いつくままに私は階段に向かう。
「あっ。もう教室前で待ってたりして! 行ってみよ――」
振り向きながら三那斗にそう声を掛けた。
でも、三那斗はフェンスに指を引っかけたまま、私の方を振り返らない。
――三那斗? もしかして、私が余計なことを言っちゃったから傷ついて……泣いて――――。