【続】隣の家の四兄弟
「――――せ、いじ、にぃ……」
「……え?」
い、今、なんと……?
「み、三那斗……? 今、なんて」
私は屋上の中央で立ち止まる。フェンスの前に立ってる三那斗は、そのまま振り返らない。
三那斗の背中を呆然と見つめてると、急に三那斗が叫ぶ。
「聖二兄!」
その声が本人に届いたみたいで、三那斗はなにやらジェスチャーをして、すぐに身を翻した。
私の方向に走ってくる三那斗に、状況が理解できない。
「な、なんで……?!」
「わかんね! とりあえず下、降りる」
「わ、私も!」
なんだかよくわからないまま、私は屋上をあとにする。
階段の手すりを掴んで急いで掛け降りるけど、あの三那斗に到底おいつくはずもなくて。
踏み外しそうになった足を、なんとかその手すりを掴む手で堪えながら、息を上げてクラスへと戻る。
いつもとは違った静かな廊下が、各クラスが面談中なのだということを物語ってた。
私は叫びたい気持ちを抑えて、遠くに見つけた三那斗の後ろ姿を懸命に追った。
ようやく追いついたときには、情けないことに肩で息をするくらいで。
膝に手をあてて、呼吸を整えながら三那斗に話しかけようとしたとき――。