【続】隣の家の四兄弟
「せっ、聖二兄!」
「……アニキに頼まれた」
足の速い三那斗にやっと追いついたら、その奥には紛れもなくホンモノの聖二が立ってる。
「え? じゃあ浩兄は……」
「仕事で急な来客だと。メールする時間もなかったらしい」
「だったら電話……」
「授業中だったんだろ?」
「あ……」
三那斗と聖二の会話を聞いて、とりあえずは心配は無駄に終わったとわかってホッとする。
「まったく。俺が都合つかなかったらどーすんだよ。孝四郎でも寄越す気だったのか、アニキは」
聖二が、ジャケットのポケットに手を突っ込みながら漏らす。
浩一さんの代わりに、孝四郎くんが三那斗の三者面談……?
廊下の天井を見上げるように、そのことを想像してみる。
いや! いやいや! そりゃあり得ないよね! 歳下の孝四郎くんが、歳上の三那斗の保護者役なんて!
……頭の回転とか、体裁よく会話する技術とかは問題なさそうだけど。
なんて、くだらないあり得ない想像をしてると、周りの視線に気付いた。
その視線は私に向けられてるものじゃなくて安心する。
ん?じゃあこの人たちの視線ってどこに?
私の側にいるのは、三那斗……。
ちらりと三那斗の背中を見て、僅かに残ってる生徒の視線と照らし合わせる。
いや……違う。
もう一度、女子生徒の視線をゆっくりとたどる。
その先にいたのは……。