【続】隣の家の四兄弟
だって、私たちに近づいてくるその人物は、こんなとこには無縁のはずの人物。
「ちっ、チハルゥ⁈」
私や聖二の代わりに、声に出してくれたのは、やっぱり三那斗。
「Hi!」
「『Hi!』っじゃねぇ! お前こんなとこになにしに来たんだよ⁈」
三那斗の声は、またも静まり返っている廊下に響く。
付近の親子の視線に気付いて、声のトーンを落としながら三那斗が言った。
「まさか勉強しにきたとか言わねぇよなぁ?ああ、でもチハルなら言いそう!」
「ミナトー。いくらぼくでもそんなこと言わないよ。これは“おつかい”」
「“おつかい”ぃ⁈」
三那斗の声が、また自然と大きくなってくる。
その度、私は周りが気になるんですけど……。
「綾瀬さん、お待たせしました」
三那斗とチハルの話の途中、教室前方のドアが開いて、担任が顔を出した。
元々立ち上がってた三那斗は、慌てて体を翻す。
聖二も静かに立ち上がると、二人はそのまま教室に入って行った。
「セイジが一緒だったんだねー。ぼくはてっきりコウが来るかと思った」
「浩一さんは急なお仕事みたい……って、なにちゃっかり座ってんのよ!」
ごく自然に私の隣に腰をおろすチハルに、思わず全力で突っ込んでしまう。
チハルは軽く笑って、そのまま頭の後ろに手を組んで廊下を見渡した。