【続】隣の家の四兄弟

チハルは、ただ、深い意味なく聞いてるってわかってる。
だけど、胸を張れるような答えが私にはまだなくて、正直あまりこの話題はしたくない。


「私は、まだ……。三那斗はなんか、ああ見えてちゃんと考えてるみたい! お母さんも、私くらいのときにはもう、今の仕事をしたいって決まってたって言ってたし……みんなそんなもんなのかなぁ?」


チハルが運ぶお皿を受け取って、そのまま洗い始める。
対面式のスペースに頬杖をして、チハルはその場で私を見て言った。


「ミナト? へぇー。なにになりたいの?」
「んー。浩一さんみたいな感じ……じゃないかなぁ?」


あまり人のことを、勝手に言うのもなぁと思って、さらりとしか説明しなかった。
でも、相手が三那斗だからか、チハルはそれ以上深入りすることなく。

すると、チハルが口を開いた。


「そーいえば、アキラも。だいぶ前からやりたい仕事、決めてたみたいだったなぁ」


「アキラ」という名前に、お皿を洗っていた手が止まる。

対抗してるつもりはさらさらない。でも、やっぱり気になる存在には違いないわけで、わかりやすく反応してしまう。

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