【続】隣の家の四兄弟
「お前は?」
「――え」
「なに話したワケ?」
――不意打ちだ。
ここにきて、この話題で、そんな目を向けないでよ。
三那斗とアキラの話を聞いたあとで、かなり落ち気味なのに。自分にはなんにもなくて、ほんと情けなくなる。
居心地の悪い話題。
だけど、世の中みんな、この道を通って行ってるんだよね……?私だけじゃないんだよね?
このなんとも言えない焦りと動揺。
焦燥感からくる劣等感。
なんなんだろう、私って。
ぎゅ、っと柵の上で手を握り。唇も一文字に結ぶと、俯くように睫毛を伏せた。
そんなとき――――。
ぽん、と感じる頭の重み。
「……なに、泣きそうなツラしてんだよ」
――反則だよ。
ここにきて、そんなふうに優しい手で、優しい声で。
普段は見せないその温かさに、簡単に壁を崩されちゃうじゃん。
「泣くことねーだろ。ガキ」
あああ。もう。かっこ悪すぎる。
羞恥の顔を隠すように、柵につけた腕に突っ伏した。
「……だ、って。ズル……い」
「は? 誰がだよ」
「……」
いつもそうだ。
優しい言葉じゃなくて、その手で、態度で助けてくれる。
「まー……不安なのはわかるけど。今はまだハッキリしないんだから仕方ないだろ」
そしてこんなときに、ほんの少し饒舌に。
その低めの声が、いつしかこんなに落ち着くものになってるんだ。