【続】隣の家の四兄弟
あれから全っ然音沙汰がない!
お母さんは本当に大丈夫なのかな。
もう三者面談のことなんて忘れてるんじゃ……そもそも、お父さんにそのこと伝わってるかどうか、怪しい。
三者面談と夏休みを控えた7月に入っても、全く何の情報も入ってこない両親に悶々とする。
「あー!忙しいとか言って、ただのルーズな人間なんじゃない?!」
「……それは誰のことだ」
休日の朝方のベランダで漏らした言葉に、まさかの返答…。
「な、なんで…」
「寝る前に一息―――と、思ったら、だ」
恐る恐る先に視線だけを横に向けて。
それから首もゆっくりと遅れて回す。
その声と話し方に間違えるわけはないんだけど。
い、一応…一応、確認だけ―――。
「や、やっぱり…?」
横に立つのは聖二だ。
見間違えでも、夢でもなく。
なんだか眠そうな目に、怠そうに柵に寄り掛かって背を預けて、火を点ける前の煙草を咥えていた。
「ね、寝起き……?」
「…徹夜明けだ」
いつもにも増してとっつきにくい雰囲気に、逃げ腰になりながらも私はそこにいた。
「あ…あー…大変だね。お疲れ様……」
この場合、何が正解なの?!
せめて何択か答えが選べたならまだしも、ノーヒントでこの状態の聖二にどう声を掛けるのが正しいなんてわかんないし!
言葉だけじゃなく、対応もどうしていいやら!!
なに?そっと一人にさせればいいの?
それとも聖二のほうから去ってくのを待つべき??
ぐるぐるとまだ働いてない頭で考えて、テンパってたら聖二が言う。
「俺がルーズ、ねぇ…」
「い、いや!それは…」
「あーだめだ。寝る」
「えっ…」
ちょ、ちょっと!
誤解したまんまだよ!
あんたのことじゃないってば!!
私の心の声と、空を切って伸ばした手も虚しく、聖二は煙草を吸わずに部屋へ戻って行ってしまった。