【続】隣の家の四兄弟
今の……カオ。
チハルの今の表情は、なんだっていうんだよ。
身長差をここぞとばかり活かすように僕を見下ろし、瞬時に威圧的な瞳に変わった。
気のせいなんかじゃない。あの目は、『ジャマだ』と示唆したものだ。
無言であんな圧力を掛けてくるなんて思わなかったから、思わずなんの反応も出来ずに負けちゃったけど……。
「……ミカ。まさか、心変わりなんてしないよね?」
もう誰もいない廊下でぽつりと漏らす。
本当は。
『聖二にぃだから』って気持ちがどこかにあって。
だから、それなら……って、どこか踏ん切りをつける気持ちもあった。
もちろん、二人が不仲になってしまえば話は別だけど。
それを、突然現れた、イタリア人だかハーフだか……前のお隣さんだか知らないけど。
いきなり美佳と同居したってだけでも腹が立つのに、あんなふうに急接近していくなんて。
……なに考えてるのか読みづらい相手な分、余計にムカムカとして落ち着かない。
まさか遊び相手で美佳を選んだとかはさすがにないとは思う。
いや、むしろさっきの目は……。
「――本気?」
まさか。
そう思いたくても、今さっきのチハルの顔が妙に頭から離れずにいて。
イライラしたまま、僕は自分の家の玄関をガチャリと開けた。