【続】隣の家の四兄弟
「……コウちゃんっ……!」
まるで実の兄が来たかのように、アキラはコウへと駆け寄っていく。
……まぁ確かに。コウは昔から優しくて、今でもそれは変わらないから。
実兄(ぼく)より、コウの方が素直に甘えられるんだろうけど。
仕事帰りのコウの胸に飛び込んだアキラは、前置きなく今の話の続きをぶつける。
「ねぇ?!コウちゃんならわかるでしょ?セイジ、以前(まえ)と変わっちゃったよね?!」
縋るような目を向けられたコウは、なにかを察したのかアキラの手を受け止めて真顔で返す。
「廊下(ここ)じゃ落ち着かないだろう?うちに入ろう」
そう言って、コウはアキラをすり抜け解錠すると、玄関を開けてぼくたちを招き入れてくれた。
ぞろぞろと家に上がると、みんな手にしていた荷物を下ろすくらいで、あとは黙ってその場の様子を窺っていた。
広いリビングで誰ひとり椅子に座ることもなく。
ここでも、やっぱり一番に動いたのはコウ。
「座ってて。なにか飲み物いれるから」
そう言って一人キッチンへと入って行く。
それを受けて、チビコウが先にソファに座り、続いてミナトがダイニングテーブルについた。
ぼくもミナトにならうように斜め向かいの椅子に腰を下ろす。
ほどなくして、トレーに人数分のグラスを乗せてコウがキッチンからやってくる。
それをテーブルに置いて、ひとつのグラスを手にすると、一番先にアキラに差し出した。