【続】隣の家の四兄弟
「はい」
「……わたしの知ってるセイジは、あんなふうじゃなくて、もっと――」
「いつも、ニコニコしてたね」
アキラが受け取らないグラスを持ったまま、コウはアキラの言葉を汲み取ってそう言った。
アキラはまるで子どものように、周りが見えなくなったようにしてコウに詰め寄る
「そうよ!なのに再会してからは一度も……。あのミカって子がセイジをあんなふうに変えちゃったんでしょ?!」
激昂するアキラに、コウは「ふー」っと長い息を吐いてグラスを置き、穏やかな口調で諭すように話し始める。
「……いや。おれはそうは思わない。むしろ、彼女は聖二をあの頃に戻していってると思うよ」
「ウソ……!コウちゃんは、あのコが好きだから肩を持ってるだけでしょ?」
「そう思われてしまえばそれまでだけど……どうしても納得できないんだね?」
「そりゃそうよ。信じられない」
コウはまた「はぁ」と息を吐くと、ソファの背もたれに腰を浅くかけてゆっくりと語り始める。
それはぼくにも興味のあることで。
セイジはどうしてあんなふうに普段から寡黙になってしまったのか、とか、ミカとはどんなふうに過ごしていたのか、とか。
二人が恋人だというのに、アキラじゃないけど多少疑問のあることもあったから。
けれど、セイジが前の恋人とすれ違い、それが原因で余計に口を閉ざし始めたこととか、その殻に閉じこもったセイジを、ミカがぶち破ったこととか。
あの二人が自然とお互いを意識していったのは、コウ以外の目にもわかっていたようで。