【続】隣の家の四兄弟

孝四郎くんが黙っているから、なんとなく私も黙っているけど。

なんだろう。
何を考えてるのかな。

さっきの話題、やっぱりまずかったかな…。


一人ぐるぐると孝四郎くんが黙りこくってる理由を考えていると、急に孝四郎くんが顔を上げて私を見た。


「―――お昼とか、その後とか…美佳はどうしたい?」
「えっ」


その言い方は、別に上から目線でもなんでもなくて。
むしろなんか……困ったように聞こえたし、そんな風に見えるけど。

だって、いつもの強引さとか、無邪気さとかがなくて―――しおらしい雰囲気だ。


「えーと…なんでも…いいんだけど…?」
「僕も」
「……好きなお店とか、は?」
「特にない」


これはどういうことだろう。

具合が悪いようにも見えないし…。
でもいつものグイグイな孝四郎くんじゃない感じで調子が狂う。


「じゃ、じゃあ適当に歩きながら決める…とか?」
「うん、それでもいい」
「それとも―――…」


私は孝四郎くんの手にある紙袋に目をやって、つい言ってしまった。


「…家に帰ってその本読む?」


その言葉に孝四郎くんが目を丸くする。
そして少し顔を赤らめて、目を伏せて言った。


「―――ごめん。うまく出来なくて」


< 24 / 286 >

この作品をシェア

pagetop