【続】隣の家の四兄弟
孝四郎くんが黙っているから、なんとなく私も黙っているけど。
なんだろう。
何を考えてるのかな。
さっきの話題、やっぱりまずかったかな…。
一人ぐるぐると孝四郎くんが黙りこくってる理由を考えていると、急に孝四郎くんが顔を上げて私を見た。
「―――お昼とか、その後とか…美佳はどうしたい?」
「えっ」
その言い方は、別に上から目線でもなんでもなくて。
むしろなんか……困ったように聞こえたし、そんな風に見えるけど。
だって、いつもの強引さとか、無邪気さとかがなくて―――しおらしい雰囲気だ。
「えーと…なんでも…いいんだけど…?」
「僕も」
「……好きなお店とか、は?」
「特にない」
これはどういうことだろう。
具合が悪いようにも見えないし…。
でもいつものグイグイな孝四郎くんじゃない感じで調子が狂う。
「じゃ、じゃあ適当に歩きながら決める…とか?」
「うん、それでもいい」
「それとも―――…」
私は孝四郎くんの手にある紙袋に目をやって、つい言ってしまった。
「…家に帰ってその本読む?」
その言葉に孝四郎くんが目を丸くする。
そして少し顔を赤らめて、目を伏せて言った。
「―――ごめん。うまく出来なくて」