【続】隣の家の四兄弟
「なんだよ。煙草(これ)か?」
「えっ。あ、いや……」
「言われなくても、もーやめるから。ホラ」
ぬっと長い手が伸びて来て、反射的に手のひらを差し出すとそこに吸いかけの煙草の箱とライターを渡された。
「ど……どーしたの……急に」
「……別に」
「や、やっぱ、変だ」
「『やっぱ』ってなんだよ」
はっ!しまった、自分!墓穴!!
じとっと向けられる聖二の視線から逃れる術はない。
でも、このことは、私自身、本当なのかどうか確かめてみたかったことでもあるから……ここは思い切って!!
「う……さ、さっき聞いちゃったの……」
「聞いた?なにを」
眉を寄せ、怪訝そうに聞き返されると怖気づいちゃう。
この男は、どーしてそういう凄みをみせるのかなぁ!さっきみたいに、ちょっとは優しい雰囲気を分散してくれないですかねっ?!
おずおずと、その威圧感に後ずさりそうになりながらもなんとか続ける。
「お母さんが――」
そこまで言うと、渋い顔をしていた聖二が急に驚いた顔にかわり、そしてついには目を逸らした。
「今日、聖二と話した……って」
『あのね』
夕方のお母さんとの会話を思い出す。
「聖二が言ったこと……あれ、本当……?」
お母さんから聞いたときはあまりにびっくりして、「違う人じゃない」って言っちゃった。
だって、チハルならともかく、聖二がそんなことを口にするだなんて想像も出来なかったから。
でも、そのあとに思い出したことがあった。
『そんなにしっかり挨拶されたら、今日の俺なんてひでーな』