【続】隣の家の四兄弟

「だから言ったろ……ひでー挨拶だった、って……」


確かに、恋人の親に、初めて掛ける言葉ではないかもしれないけど……。
でも、全然〝ひでー〟モンなんかじゃないよ。


「エラそうなこといっちまった……」
「……なによ。ていうことは、出まかせだった、ってこと……?」
「違う!」


ガバッと頭を上げて、即答した聖二は、ますます恥ずかしそうに声を小さくしていく。


「ち、ちがう……けど……もっと、最初の挨拶なら言うことあったのに……って」


ぼそぼそと自信なさげに話をする聖二は初めてみるもので。
つい、大きな体の聖二が小さくなる姿が可愛く思えて笑ってしまった。


「私だって同じじゃん」
「……なにが」
「初対面なのに、手ぶらで挨拶する彼女ってどうなの?」
「……」


フォローするようなことを言うと、少し落ち着いたのか聖二は俯くのを止めた。
ふたりで同じ空を眺める。
少ししてから、ぽつりと突然聖二が口を開いた。


「まぁ……とりあえず形からでもと思って」
「え?」
「体にもよくねーって怒るヤツがいるからな」


た、煙草のこと?
っていうことは、態度で示すためにまずは禁煙を考えたってこと?


「……ぶふっ」


堪え切れずに吹き出してしまった。
なんて単純な思考なの。聖二ってそういうタイプだっけ?
あーなんかすごく今日の聖二は可愛い。

ジロリと睨みをきかされても、今日という日は聖二に対して怖いものなんかなんにも感じない。

むしろ、おかしくておかしくて……。


「おまっ……いつまで笑っ」
「あぁ!ちくしょうっ!!」

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