【続】隣の家の四兄弟

私の目の前で携帯のメモリーを消去した時。

あの時、全ての女の子たちと清算してきた、と清々しい顔をしていた。


「だったら、もう同じことしなければいいんじゃない?」


って、私、こんな偉そうなこと言えるような立場でもないと思うんだけど。
年上ってことで、このくらいいいかな。


そんな先輩ぶった私を、きらきらとした目で見つめる孝四郎くんは、また元に戻って―――


「しない!僕、美佳だけだし!」


そういって今度はじゃれつく犬のように飛びついてきた。


「わーーーーっ!!」


こんな白昼堂々と!
目立つ!目立つから止めて!!


そうして孝四郎くんがふざけていると、二人同時にお腹の音が聞こえてきた。


「…お腹空いてたんだった」


軽くお腹を抑えて孝四郎くんがぽつりと言った。
なんだかそんな仕草が、やっぱり可愛いなぁと思ってしまう。


「ねぇ。やっぱり帰ろうか」
「え」
「ああ。つまらないとかそういうんじゃなくて。無理して外食しなくても、家で作ればいい話だし。その方が孝四郎くんも待ってる間、本見たりできるでしょ」
「え?作ってくれるの?美佳が?」
「綾瀬家さえよければね」
「全然いーよ!」


「やった!」と喜ぶ孝四郎くんが、はた、と動きを止めた。


「…聖二にぃがいるからでしょー…」
「ち、違う!!」


じとっとした視線を受けて、冷静に考える。


そうだった。今日は聖二もいる雰囲気だったんだった。

孝四郎くんをウチに招いて二人きりより、出入りありそうな綾瀬家が安全かと思っただけだったんだけど…。

アイツ…機嫌どうだろな…。


そんなことを考えながら、ぶーぶーいう孝四郎くんを宥めて家へと帰った。

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