【続】隣の家の四兄弟
「はぁー。もう、三那斗はこれだから…ガキ」
「てめっ!ガキのお前に言われたかないんだよ!」
「精神年齢が、僕よりガキ」
何もかもわかってるように孝四郎くんが三那斗にふっ掛ける。
未だに理解せずに立ち尽くす私を見て、孝四郎くんがにこっと笑った。
「ああ、ごめんね。美佳、置いてけぼりさせて」
「え?う、うん…」
隣でギャーギャー言う三那斗を無視して孝四郎くんは続けた。
「さっきのこと」
「『さっき』…?」
さっきってなんだろう?
聖二に水を注いであげたこと?
でもそのあと浩一さんにだって同じくしようとしたし、第一聖二が言ったとか言わないとか言ってたし…。
「聖二にぃが起きた時、美佳に『水』って言ったでしょ」
「―――え?!」
「そのあと、『何時』とか」
確かに言われたけど…それって普通のことじゃないの?
「…へぇ。それは珍しいかも」
会話に加わったのは浩一さん。
浩一さんも、孝四郎くんの言ってる意味がもうわかるんだ。
さすが兄弟。
なんて感心してる場合じゃなかった。
「それって…“珍しい”の?」
私は孝四郎くんに聞き返したつもりだったけど、その返事をしてくれたのは浩一さんで。
「―――美佳ちゃん。聖二はね、基本誰にも何も頼まないよ」
「へっ…?」
「自分でやった方が早いし確実だから、だって」
それって、なに?
じゃあ、さっき他愛ないことだと思ってたことって―――。
そこまで考えて聖二の後ろ姿を見る。