【続】隣の家の四兄弟

「部屋も空いてるって言うし、ゴハンも出るっていうし」


ベランダ側に歩きながら、チハルは楽しげに言う。


「ゴハンも出る」って……それ、私のことアテにしてない?!
こんの、放蕩オヤジーーー!!

そう思ってギロッとお父さんを睨むけど、涼しい顔してコーヒーカップに口付けてるし!


そして外を見ていたチハルがこちらを振り向く。


「隣にはコウとセイジがいるし!」


あぁ、眩しい!!

ただでさえ昼下がりの夏直前の燦々とした太陽がそこにあるってのに!

あんたの笑顔と白い歯が、とっても眩しいんだよ!


「…と、いうわけだから、夏の間よろしくな。もうすぐ夏休みだろう?」


ヘラっと呑気に笑いながらお父さんは言った。


「いや、確かにもうすぐ夏休みなんだけど……」


でも、一応受験生だし。
ってかひとつ屋根の下に娘一人なのに、男住まわすってどんな親だよっ。


「―――や、やっぱりっ…」
「Festa! 休み?じゃあちょうどよかったー」


“やっぱり同居の話どうにかして”って言おうとしたのにチハルが言葉を被せてきた。

しかもぶんぶんと手を取って握手されながら…。
握手2度目ですけど…。


「おおー。もうすっかり大丈夫そうだな!じゃあ父さん行ってくるな!」
「えっ、ちょっと!」


お父さんはまるでローマ字で『HAHAHA!』と吹き出しが書かれているような雰囲気で笑いながら家を出て行った…。

あんの、能天気オヤジっ!


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