【続】隣の家の四兄弟
「アホか。どうせこれからも出入りすることの方が増えるんだから」
ぐしゃっと頭を撫でられた。
「それとも何か?ずっとベランダ(ここ)だけで会うつもりか?」
「えっ…」
「風邪ひくのはお前だろ」
確かに過去風邪をひいて迷惑は掛けたけど!
そんなことを思い出して口を噤んだ。
「兄弟相手にずっと敵意むき出しなんて出来るわけねぇだろ…」
また呆れた口調で髪を掻き上げて聖二が言った。
そうだけど…でも、少しくらい心配してくれたって。
そういう細かいところが、自分との気持ちの大きさの違いかと思っちゃうところなのに。
…でも、こんな小さいことを気にしてるのがダメなのかな。
すると、聖二がまた手を伸ばして私の髪を軽く引っ張った。
「一度しか言わねぇぞ」
その低い声が目の前で聞こえてドキンと大きく胸を鳴らす。
「俺の隣にいろ」
その短い言葉に眩暈を起こしそうになる。
綺麗な顔立ちの男に、低く甘い囁きを受ける。
そんなことされたら立ってるのがやっと。
「それだけ約束すれば、別に俺はなんとも思わねぇっつってんだよ」
あーもう。
この男、わかっちゃいない。
普段から優しい浩一さんとか、いつも真っ直ぐ偽らない三那斗とか、策略家の孝四郎くんとか。
あの三人が、仮に同じ事を言ったとして。
それと比べて、聖二という人間から言われたという事実が凄すぎる。
それくらい、聖二が言ってくれたということに意味がある。
「―――そんなの、いまさら約束するまでもないでしょ」
私は聖二を睨んだ。
でも、きっと顔は赤い。
「私が先に好きになったんだから!」