【続】隣の家の四兄弟
「でもさっ。チハルはすごいね! モデルとかさ!」
明らかに空回った話題かもしれないけど、沈黙よりずっといい。
もちろん、こんなイケメンが私にどうこうとかあり得ないし。
ふたりきりだからってなんかされるとか、そんな想像するのもおこがましいし。
そうは思うんだけど、やっぱりどこか緊張してる私は、若干上ずった声で次々言葉を投げかける。
「そういう才能、私にもあればさ! もっと違う人生だったかもしれないよねー。あはは」
ああ、でも、なんか自分で笑っててちょっと虚しい。
別にモデルとかアイドルになりたいだなんて、本気で思ったことなんかないけど……。
だけど、せめて、好きな人の隣に並んで釣り合うくらいの女性には……なりたいなぁ。
そうして想像するのはもちろんアキラで。
乾いた自分の笑いが余計になんだか惨めにさせる。
「……ミカは、なにになりたいの?」
突然のチハルの質問。
「え、えー……? 私? ……なんだろー……」
ホント。私って、将来なにになりたいんだろう。
それ、つい最近も考えたことだけど、やっぱり『これ!』っていうものは浮かばない。
成績もイマイチだし、大学にとりあえず行って……それから就職?
一般企業ってよく耳にするけど、どんなことしてるのかな。
事務とか営業とか……お茶汲みしたりコピーとったりとか、そういう未来もなんだかピンとはこない。