製菓男子。
「塩谷さん、今日はなにがおすすめかい?」
「ブラウニーはどうでしょうか? 木綿豆腐を使っているので、しっとりした触感で食べやすいと思いますし、山中豆腐さんのものだから一段とおいしいですよ」
「あれまー、あそこのを! あそこのじーさんも高齢だから、なかなかやっとらんでしょう」
「店の前を通ったら偶然開いているのを見つけたのでラッキーでした。だから今日のメニューにブラウニーを入れたんですよ。なかなか食べられません」
その“山中豆腐のじーさん”と負けず劣らずの老婦人の頬まで、塩谷さんはピンク色に染め上げる。
子供・大人・老人なんていう年齢を飛び越えて、塩谷さんはお天道さまに干したバスタオルのようなやわらかい笑顔で接するせいだと思う。
「チヅルちゃん、慣れた?」
「いえ、全然」
(役にも立ちませんし、今すぐ解雇すべきだと思います)
心の中は饒舌なのに、声に出しては言えない。
俯いていると新たにお客さんが来てしまった。
そして先ほどの老婦人と同じように「おすすめなに?」と塩谷さんに聞いている。
「そうですね、今日はバナナケーキがうまく焼けたんですよ」
「じゃあ、それいただくわ!」
塩谷さんは人にあわせて接客をし、お客さんは満足して帰っていく。
「なんかまた、品物少なくなっちゃたね」
また焼くかーと塩谷さんは厨房に戻っていった。
「ひとりだと大変だよなぁ」と愚痴を零しながら。
「ブラウニーはどうでしょうか? 木綿豆腐を使っているので、しっとりした触感で食べやすいと思いますし、山中豆腐さんのものだから一段とおいしいですよ」
「あれまー、あそこのを! あそこのじーさんも高齢だから、なかなかやっとらんでしょう」
「店の前を通ったら偶然開いているのを見つけたのでラッキーでした。だから今日のメニューにブラウニーを入れたんですよ。なかなか食べられません」
その“山中豆腐のじーさん”と負けず劣らずの老婦人の頬まで、塩谷さんはピンク色に染め上げる。
子供・大人・老人なんていう年齢を飛び越えて、塩谷さんはお天道さまに干したバスタオルのようなやわらかい笑顔で接するせいだと思う。
「チヅルちゃん、慣れた?」
「いえ、全然」
(役にも立ちませんし、今すぐ解雇すべきだと思います)
心の中は饒舌なのに、声に出しては言えない。
俯いていると新たにお客さんが来てしまった。
そして先ほどの老婦人と同じように「おすすめなに?」と塩谷さんに聞いている。
「そうですね、今日はバナナケーキがうまく焼けたんですよ」
「じゃあ、それいただくわ!」
塩谷さんは人にあわせて接客をし、お客さんは満足して帰っていく。
「なんかまた、品物少なくなっちゃたね」
また焼くかーと塩谷さんは厨房に戻っていった。
「ひとりだと大変だよなぁ」と愚痴を零しながら。