製菓男子。
涙を拭ったわたしは、気を取り直して接客をはじめた。
ヤマ猿女子高生の次がふたり連れの男性客だったことがよかったのかもしれない。
カルトンにお金を置いてもらっている間に、商品を袋詰めする。
丁度いただいたので、レシートを再びカルトンにのせて出す。


(今度はミスなく、きちんとできた。ちょっと感動)


もしまたあのヤマ猿女子高生みたいなお客さんだったら、細枝のようなわたしの心がぽっきり折れていたに違いない。
まだ一組しか相手をしていないのに、ぐっと肩が軽くなる。


「ここ数日で男性客が増えたよねぇ。どこで聞きつけたんだろう」
「そんなこと、ないと思います」


(相変わらずの女性ばかりで、わたしは恐いです)


一対九の割合で圧倒的に女性客が多いのが現実だ。


「そうかなぁ? 今まで女性客しか来なかったんだよ? 今日も男性客何組か来てたし、シンジも頻繁に来るようになったしね」
「荒川さんの場合は、わたしがちゃんとお化粧できてるかどうかっていう―――」
「俺、それ本当じゃないと思うんだよね。アイツ、素直じゃないから」


塩谷さんはなにかに気づいて、わたしの目もとを触ってくる。
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