製菓男子。
「ティッシュ持って来るね」
「ごめんなさい」
「“ごめんなさい”って言った。そこは“ありがとう”のほうがいいかもよ? でも俺のせいで泣かせちゃったわけだから、“ごめんなさい”って謝るのは俺のほうだ」
「違います―――」


(わたしが涙もろいのがわるいんです。だから塩谷さんのせいじゃないです)


思ったことを口に出すのは難しい。
苦闘していると、塩谷さんの手がわたしの頭部にぽんと置かれ、撫でられる。


「涙もろい、チヅルちゃんもかわいいね」


塩谷さんは女性を魅了する人懐っこい笑顔を浮かべて、厨房に消えていった。
そういった笑顔はわたしになんか使わなくていい、もったいない代物だと思う。



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