製菓男子。
レジにミツキが立っている。
そして僕が商品を並べている。
藤波さんが来るまで当たり前だった光景だが、どこかしっくり来ない。
今日はレーズンサンドクッキー、ドライフルーツのケーキ、ベリーベリーシフォンという、藤波の大きらいなレーズンづくしのメニューにしてみた。
「露骨すぎるだろ」とさすがにミツキは僕の不機嫌な理由に気づいたようだが、お客さんにはそんな事情はわからない。
いつもと同じように買われていっている。
並べ終わって厨房に戻る。
レジでは中年の女性客がピンク色の皐月のように頬を染め上げていて、ミツキの前では少女のようになっていた。
そのミツキの横顔は普段どおりに見えるが、どこか笑顔が乾いているような気がする。
「ゼン、俺見てないで作れよ」
「無理、気分が乗らない」
「じゃあ、俺と交代するか?」
「それも無理。接客苦手」
お客さんが途切れ、時計を見ると十二時半をすぎている。
「パン教室の準備する」
「お前なぁ―――」
逃げるように店をあとにして、二階の教室に駆け上がった。
通り沿いにある窓から外を見る。
毎週土曜日になるとそこを通るロリータ服のツバサは、もう二度と見られないだろう。
そして僕が商品を並べている。
藤波さんが来るまで当たり前だった光景だが、どこかしっくり来ない。
今日はレーズンサンドクッキー、ドライフルーツのケーキ、ベリーベリーシフォンという、藤波の大きらいなレーズンづくしのメニューにしてみた。
「露骨すぎるだろ」とさすがにミツキは僕の不機嫌な理由に気づいたようだが、お客さんにはそんな事情はわからない。
いつもと同じように買われていっている。
並べ終わって厨房に戻る。
レジでは中年の女性客がピンク色の皐月のように頬を染め上げていて、ミツキの前では少女のようになっていた。
そのミツキの横顔は普段どおりに見えるが、どこか笑顔が乾いているような気がする。
「ゼン、俺見てないで作れよ」
「無理、気分が乗らない」
「じゃあ、俺と交代するか?」
「それも無理。接客苦手」
お客さんが途切れ、時計を見ると十二時半をすぎている。
「パン教室の準備する」
「お前なぁ―――」
逃げるように店をあとにして、二階の教室に駆け上がった。
通り沿いにある窓から外を見る。
毎週土曜日になるとそこを通るロリータ服のツバサは、もう二度と見られないだろう。