製菓男子。
「作っていく?」
「いいんですか?」


僕の提案は快く受け入れられたようでなによりだ。
藤波さんの表情は、太陽をいっぱいに浴びた菜の花のような、そんな光で満ち溢れている。


「あの、その、えっと、お言葉に甘えて、ポルボロンが作りたいです」
「材料、すきに使っていいよ」


藤波さんは冷蔵庫をのぞくと、無塩バターや卵、ショートニングを取り出した。
作業台にはほかにも、薄力粉、粉砂糖、シナモン、パテ抜き型などが用意されている。


「僕の作る、材料と違う」


ほとんど同じだけれど、僕はショートニングを使わない。


「参考する本によって、レシピが変ってきますよね。昨日作ってくれた塩谷さんのポルボロンも、たぶん、宮崎さんのレシピと違うと思いますよ? スノーボールクッキーみたいでしたから」


ポルボロンはバターを使う。
ミツキは過去のトラウマからバターがすきではないから、使うことが非常に珍しい。
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