製菓男子。
わたしが俯いているのが、一番わるいのだけれど、ツバサくんの視線がわたしのつむじに注がれていて、太陽の光を使って虫眼鏡で紙を焼くみたいに、そこが一点集中で熱い。


おとといの日曜日のことだ。
わたしは風邪で寝込んでいる兄のために買い物に行って、たまたま会ったツバサくんに荷物を持ってもらっていた。
そのときのお礼をまだしていなかったし、ツバサくんの願いをわたしは聞き入れていなかった。




『あの、その、おねえさんは占い師って聞いたんですけど、折り入って占ってほしいことがあるんです』


(どうしたらリコと前みたいな関係に戻れるのかな。リコの気持ちが見えればいいのに)




純粋な、恋している少年の赤らんだ横顔に、わたしは罪悪感を覚えた。
アリのような虫が胸の中で蠢いている感じで。


「占いは、できないですけど、リコちゃんの未来を見ても、いいですか?」
「リコの?」
「たぶん、もうすぐ、来ると思うんですけど」
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