製菓男子。
藤波家は僕の働く製菓店から遠くない。
店の道向かいにある酒造の、その裏手に広がっている住宅地の一角にあり、あたりでも目立つ一軒家だ。
家自体は建売住宅のような簡素なものだが、畑や芝生があり庭が広い。
藤波の妹はその畑で草むしりをしていた。
手には手袋、首にはタオル、頭部には深振り帽子。
肌の露出をなるべく控えるような隙のない格好で。
藤波の妹とは初めて会ったが、どこか野暮ったい印象を受ける。
「農作業する引きこもりらしいよ?」
物音に気づいたのか、背を向けていた妹が振り返った。
顔がない。
正確には長い前髪で顔が隠れている。
妹は驚いたのか身体を大きくびくつかせて持っていた道具を放ると脱兎の如く玄関へ走り去ってしまう。
「おまえ相当きらわれてんなー」
「ちげーよ。見慣れない男がいたからだろ」
塀の向こうからのぞいていた僕らは唖然として、しばらく立ちすくんだ。
高校時代の藤波はよく妹の話をしていたように思う。
強い日差しにあたるとじんましんが出てしまうこともあり、肌が透き通るように白いこと。
牛・豚・鳥などの肉が苦手でジャンクフードも苦手、胸以外に無駄な肉がついていない細身の体型。
ストーカー被害にたびたびあうくらいのうつくしい容姿をしていること。
少なくとも僕には、藤波が妹を溺愛していたように聞えた。
店の道向かいにある酒造の、その裏手に広がっている住宅地の一角にあり、あたりでも目立つ一軒家だ。
家自体は建売住宅のような簡素なものだが、畑や芝生があり庭が広い。
藤波の妹はその畑で草むしりをしていた。
手には手袋、首にはタオル、頭部には深振り帽子。
肌の露出をなるべく控えるような隙のない格好で。
藤波の妹とは初めて会ったが、どこか野暮ったい印象を受ける。
「農作業する引きこもりらしいよ?」
物音に気づいたのか、背を向けていた妹が振り返った。
顔がない。
正確には長い前髪で顔が隠れている。
妹は驚いたのか身体を大きくびくつかせて持っていた道具を放ると脱兎の如く玄関へ走り去ってしまう。
「おまえ相当きらわれてんなー」
「ちげーよ。見慣れない男がいたからだろ」
塀の向こうからのぞいていた僕らは唖然として、しばらく立ちすくんだ。
高校時代の藤波はよく妹の話をしていたように思う。
強い日差しにあたるとじんましんが出てしまうこともあり、肌が透き通るように白いこと。
牛・豚・鳥などの肉が苦手でジャンクフードも苦手、胸以外に無駄な肉がついていない細身の体型。
ストーカー被害にたびたびあうくらいのうつくしい容姿をしていること。
少なくとも僕には、藤波が妹を溺愛していたように聞えた。