製菓男子。
月曜日だけは、少し先の、未来の不幸が見える。
父と手が触れたとき、母から離婚届を突きつけられる姿が脳裏に浮かんだ。
(これで別の女性と一緒になれると父は思っていた)
クラスメートと手が触れたとき、目の前に車が迫って視界が血の赤で染まっていった。
(「もっと強く言ってくれたら防ぐことができたのかもしれなかったのに」と、通夜の席で罵倒された)
先生と触れたとき、足もとに遺書を置いて覚束ない視線で地上に落ちていった。
(浮気相手が保護者だとばれたせい。それは父ではなくてほっとした覚えがある。そう思ってしまったわたしは最低な人間)
兄と触れたとき、わたしを追った変質者に向かって兄が拳を振りあげていた。
(わたしのせいで傷害事件として立件されそうになったし、兄も怪我を負った)
ほかにも、ほかにも、ほかにも―――数え切れないほどたくさんの人の不幸を見てきた。
そしてその人の視線を借りてだったけれど、わたしが傷つけられるところも。
(いい気味だって、気持ちわるいって、当然の報いだって、わたしを攻撃してた。でも同時にごめんねって、謝ってた)
未来の見えるわたしはずっとずっと、人に関わらないように家ですごした。
家はまるで刑務所で、庭は刑務作業場で、部屋は犯罪者の檻で、そうやってわたしは家にこもっていた。
父と手が触れたとき、母から離婚届を突きつけられる姿が脳裏に浮かんだ。
(これで別の女性と一緒になれると父は思っていた)
クラスメートと手が触れたとき、目の前に車が迫って視界が血の赤で染まっていった。
(「もっと強く言ってくれたら防ぐことができたのかもしれなかったのに」と、通夜の席で罵倒された)
先生と触れたとき、足もとに遺書を置いて覚束ない視線で地上に落ちていった。
(浮気相手が保護者だとばれたせい。それは父ではなくてほっとした覚えがある。そう思ってしまったわたしは最低な人間)
兄と触れたとき、わたしを追った変質者に向かって兄が拳を振りあげていた。
(わたしのせいで傷害事件として立件されそうになったし、兄も怪我を負った)
ほかにも、ほかにも、ほかにも―――数え切れないほどたくさんの人の不幸を見てきた。
そしてその人の視線を借りてだったけれど、わたしが傷つけられるところも。
(いい気味だって、気持ちわるいって、当然の報いだって、わたしを攻撃してた。でも同時にごめんねって、謝ってた)
未来の見えるわたしはずっとずっと、人に関わらないように家ですごした。
家はまるで刑務所で、庭は刑務作業場で、部屋は犯罪者の檻で、そうやってわたしは家にこもっていた。