製菓男子。
塩谷さんのほかに、もうひとり従業員がいる。
その宮崎さんも兄の友人のひとりだからして人目を惹きつける顔立ちをしている。
塩谷さんは黒髪で目鼻立ちがはっきりしている端正な顔で、もうひとりの宮崎さんは全体的に雰囲気がやわらかい北欧系のハーフ顔をしている。
それだけでなくふたりは身長も高いので、女性受けが非常によすぎる。


(「黒王子」「白王子」と呼ばれているらしいことをお客さんに聞いたことがある)


そのふたりと働くということは、いわれない敵意にさらされるということであり、人によっては姑ならびに小姑のようないびりが待っている。
最近ではわざとクレームをつけて、レジの後ろにある厨房で働くふたりに会おうとする輩もいる。
そのたびに防ぎきれなくてごめんなさいと、涙が出そうになる。


「土曜日のロリータ」と荒川さんから呼ばれている女の子は、そんな精神的なダメージを受けて下を向いていたあとに必ずやってきていて、なにごともなく買い物をしてくれる。
「なにごともない」というのがわたしには重要で、それが癒しで、わたしはいつもうっとりとその女の子を眺めてしまう。


(きっと性格もいいんだろうなぁ)


おそらくその女の子はフェアリー系と呼ばれる、ディズニープリンセスシリーズから飛び出したようなメルヘンチックなロリータ服を着ている。
それがよく似合っていて、お姫さまみたいだ。
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