製菓男子。
店の二階はパン・ケーキ教室になっている。
教室開校以来今日が初めての親子レッスンだ。
宮崎さんはこれがうまくいったら、夏休み期間中は本来のレッスンをお休みにして要望の多い親子教室にすると言っていた。


(大丈夫だったのかな?)


ヒロくんは小学二年生の男の子だ。
そのお母さんは後妻なので実際にヒロくんとは血が繋がっていない。
それに悩んでいたヒロくんを助けたのが宮崎さんで、その際にわたしも、自分でできることを空回りながらお手伝いしたことを思い出す。


(ヒロくんの立場って他人事とは思えなくて……)


そのとき精一杯頑張った成果なのか、わたしは人と前向きに雑談できるようになった。
徐々にだけれど人見知りが足の小指の爪の先くらいはマシになった気がする。


宮崎さんはふたりに向かって軽く頭を下げ、ヒロくんたちは満面の笑みで手を振って応えている。
ぬるい紅茶のような午後にレモンが入って、どこかすすっきりした風が吹いた。
店の中でそれを見ているから、実際にはそんな風は吹いていないけれど。


(こういう雰囲気って素敵だなぁ)
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